出会いから20年で建築。それから20年経た輸入住宅のリフォーム

またしばらくブログの間が空いてしまいました。
久しぶりの投稿となります。
なかなかアップできませんでしたが、2月の10日から亀山市で輸入住宅の大規模なリフォームをしていて、3月末まで約1.5ヶ月かかりました。
今回はまとめてその工事をご紹介します。


完成後正面。

玄関前、完成後。

この家が建った時のこと・・・

このお家は作ったのが20年前。
当時輸入住宅の専門誌に取り上げられたこだわりの注文住宅です。
最初お会いした時に、いろいろと当時の建築中のお話を奥様から聞かせていただきました。
そして、当時掲載された大切にしている雑誌を見せていただきました。


その雑誌の表紙に、『出会いから20年。徹底したディスカッションの中から生まれた理想の住まい』とタイトルが書いてあり、当時お客様の感想に「こちらの要望を根気よく聞いてくれて、可能な限りそれを形にしようと言う熱意がどのメーカーよりも信頼できましたね!」と書いてありました。

20年前の記事ですが、改めて大切な事はいつまでたっても変わらないと思いました。
この会社(ノールウエストホームズ)は私が社会人になって輸入住宅を初めて知るきっかけとなった会社。
ここで、輸入住宅の設計、施工システム、材料の特徴など特に施工面を中心に学び働きました。

当時はお客様と工事担当者が話をする機会はあまり多くは有りませんでしたが、今になってこのようなお客様が支持してくれていたんだな、と改めて会社の当時作り上げたものの偉大さに気づきます。
残念ながらその会社は今は無いのですが、私のような者が、少しでもこういった家づくりへの姿勢を受け継ぎ、残していきたいと思います。

新築でもリフォームでも、心構えは同じです。20年前にこの家が出来たときのトキメキを思い出していただけるようなリフォームにしたい思いこの仕事に取り組みました。


さて、調査に伺うと今回は直すところが多岐に渡りました。

・バルコニーのドア、勝手口ドア付近の補修。
・バルコニーの防水。
・バルコニーの手すり交換
・1階リビングの壁の補修、雨漏りの解消。
・リビングフレンチドアの交換。
・玄関ドアの取り替え。
・外壁屋根の塗り替え。
・樋の取り換え
・ガレージドアの修理。
 
などが主な内容です。以下調査時の写真です。


雨が降ると排水が悪く、水が溜まっていました。

フレンチは重く、建付けも悪く、使い勝手の良い国産の引き違いに変えることに。

バルコニーは朽ちて、所々に穴が空いていました。工事を始めてわかったのですが、この朽ちた木材がシロアリを寄せ付け、建物の雨漏れして湿った部分に被害が及んでいました。

外壁はアルミサイディングでメンテナンスがしやすい方なのですが、北側が特にコケなどが付着し汚れていました。

玄関ドアの下もふわふわしてかなり傷みが生じていたので交換することにします。

樋の勾配が悪いこと、周りからの落ち葉が溜まりやすいこと、などが重なり、樋に相当の泥が溜まり、そこからは所々草が生えていました。

木製(1部樹脂製)のバルコニー手すりは、頭に触れるとぐらぐらしていました。工事前から何かがおかしいと思いましたが、工事を始めてみて見えない柱の足元に水が入り、シロアリの被害がありました。

スプリングのバランスが悪く、ずっと使っていないガレージドアを修理調整することにしました。

工事開始後、施工中

まず悪い部分を解体すると、詳細が分かって来ました。
①バルコニーの出入口付近で水濡れ
②勝手口ドア下付近で水濡れ
③リビング壁内水濡れ
④バルコニー手摺下、水濡れ
①~④全てにシロアリ被害もありました。
期間的にはかなり前からそのような状態であったと考えられます。

湿り気+木材+暗い密閉空間+一定の温度

やはりこれらの条件が重なると良くありません。

ウッドデッキの腐った木材がシロアリを寄せ付け、そこから建物本体の湿り気のある部分を狙って侵入してきたと考えられます。



ウッドデッキを撤去すると、基礎の隅からシロアリが建物に入って行く為、自ら作る「蟻道」がありました。
この真上にバルコニーの雨漏れ部分があり、そこに至るまでのリビング壁内は被害が著しい状態でした。
断熱材も落ちかかっており、これでは当初の気密性・断熱性までが欠如してしまいます。


リビングの壁を開いたところ。
この上に漏水箇所があり、下の基礎部分に蟻道がありました。

壁を大工により直したあとペイント工事です。大きめのモールで演出しました。

現在でも現場での塗装工事が多いのも弊社の特徴であり、輸入住宅・注文住宅の最も得意とするところ。
ここまでやることで本当に自分にしっくり来る理想の住まいになると確信してます。


マントルピースの横のブラケットの淡い光を生かすため、わざと天井照明を減らしたそう。
こんな当時のお話で奥様とも盛り上がりました。

掃き出しも、格子を付け印象が変わらないように配慮。桟が細いので、ガラス面はもとより大きくなり、一層明るい南窓に。

屋根のカラーベストは下の基材が所々見えてしまい、かなり劣化しています。塗料でしっかりしたコーティングをしないと材料が致命的に悪くなってしまってからは手遅れにもなりかねません。

施工前の玄関前

ここからはリフォーム後の写真です。


施工後の玄関。ドアはFiberglass Door。木の様に見えますが、木ではありません。専用塗料でここまで本物らしく仕上げるのは、この塗料と職人の技量が必要です! 

玄関の施工前の写真をお客様にお見せした時が一番驚いていらっいました。
「こんなんでしたっけ??!」もう新しいドアが馴染んでいて、びっくりしてみえました。
確かにこうやって前後を見るとかなりの違いです。また何よりも見た目では分からないドアの水切り下に水が入って木材が相当に傷んでいました。
床下から見るとシロアリの被害もあったので、周到に薬剤を投入しました。
それが一番の安心かと思います。


金物も全て交換。これも輸入品なので、勿論ぴったりです。色はシックなAntique Brass

手摺は国内メーカーの一般的なアルミ縦格子に取り換え。
基本のデザインですが、安価ですし、純白を使えば、主張しすぎない感じでしっくり溶け込んでいると思います。

ドア下には鈑金を貼ってコーキング。水濡れをガードしました。さらにシロアリ防除剤を土間に穴あけして投入してあります。

外壁は定番の白、がお客様のご希望。屋根はミッドグリーンで渋い色で彩度を押さえ、窓ルーバーや勝手口のみくすんだグリーンでまとめました。これもお客様からのご要望で決めさせて頂きました。
塗ってみるととても淡く優しい色使いで、まとまってました。


窓ルーバーシャッターも勝手口と同じくすみグリーンに塗装

屋根の塗装が終わった後、奥様が雨が降った日に屋根を見たら「うちのは雨の弾き方が全然違う!」と近所様の家を見て思ったそうです。今回は他で余裕ができた予算を使い、耐久性・遮熱性のグレードを上げた塗料を使いました。


私が「新築」と「リフォーム」のお仕事を同時に並行してさせて頂く事が有意義と感じるのは
住んで10年~30年と経たOBのお客様と、当時の想い出や、良かったことや、反省、今でも変わらない事、様々な生の声をたくさん聴けることです。
このお家でも色々なお話を工事中聞かせてもらい、そんな立ち話の中で感じたこと、学んだことが、今の新築のお客様に様々な事例としてお話出来たりします。

家という大きな買い物ですが、注文住宅とは簡単なものではありません。

デザイン、間取り、仕上げと言った設計要素と確実な施工面、知識や技術が伴ってこそ安心できる住まいとなります。
お客様との協力関係もすごく大事です。

ひとつひとつカタチが違う中、毎回、完璧を求めても、でもどこかうまく出来ないところも生じるものです。

しかし、反省や実例を生かし、次にはこれ、その次にはこれ、と常にその時の最適の方法でオリジナルの家づくりが出来るよう心掛けていきたいと思います。


輸入住宅は元々の建物のカタチが美しいので、リフォームで悪い部分を直し、塗り替え、リニューアルしたら、本当に見違えるほど素敵な家に生まれ変わります。
嬉しい変わり方をするので、私たち作り手にとってもやりがいがあります。
お客様にとってもまた心新たに家を惚れ直す良いきっかけにもなると思います。

三重県のI様、この度はありがとうございました!

「注文住宅、輸入住宅の設計・新築・リフォーム・メンテナンス」なら ノエルハウス/考作


時を経て、価値の高い家をつくること

先週は三重県を二箇所巡るメンテナンスツアーがありました。
それを振り返ります。

1日めは四日市にて「輸入窓アンダーセンの網戸取り替え&サッシ(障子)入れ替え」

いつもこの家に来る度、その素晴らしいロケーションに感激するのですが、今回は特に紅葉の時期と重なり、家と樹木がまるで一枚の絵のように見えました!


今回、網戸を変えることになったお部屋は大人数が囲んで座れるアルコーブ的なダイニングと、広いホール。

造り付けのベンチや腰壁、窓枠などを形作るパイン材やツガ材が時を経て醸し出すアメ色と艶感。
それらが織りなす趣きのある印影に、しばしうっとりしてしまいます。

住み手が長年住みこなした家にメンテナンスで入らせて頂く時の、私にとってのひとつの楽しみです。

勿論見ているばかりでなく、しっかり手は動かして仕事はさせて頂いてますけどね(笑)・・・・

この空気感の中でお家の手入れをしていると何かとてもいい仕事をしている気分になります。きっとそれが自分の仕事のモチベーションに繋がってるんだと思います。

古い車や、使い込んだ革製品などでもそうですが、上質な物を手を入れて使い続ける事って良くないですか?

私は好きです。自己満足に近い部分もありますが、ビンテージってそういうところありますよね?!


【引用:VOL.0 対照語源学からみる諸言語におけるまど】
植田康成
2.諸言語における「まど」の語源
諸言語における「まど」は、そもそもどのような意味なのか。確認した限りでは、おもに3つに類型化できるようである。すなわち、「風の目」「 (採光、換気のための) あな」、「外を見る目 (あな) 」である。
先ず、英語の「まど」windowは、古代北欧語vindaugaに由来し、「風の目」を意味する。

窓越しに外の風景が綺麗に見えるのも、木製窓だからこそ。
窓=WINDOWの語源は「風の目」
外壁に空いた穴は採光や換気の為だけでなく、
外の風景を見るための建物の目とも言える。

和の建築なら、窓に額縁は無く、開放的で自然に同化する。人が自然の中に入っていくイメージ。

洋の建築なら、額縁を付けて、自然と屋内を一つの境界線で区切り、自然を一枚の絵のように見せる。
屋内から、自然を切り取り、眺めるイメージ。

「窓=一枚一枚がひとつの絵」と思える瞬間です。


回廊のようなカバードポーチが素敵です。


工事をしながら当時の仕事を見ていると興味が尽きません。

思うのは、当時しっかり考えてデザインし、自然素材を主に使い、ちゃんと作り込んだものは、いつまで経っても良い。
たぶん誰がここを見ても何かしら感動するとか落ち着く気分になると思います。

そして、いかに時間をかけて設計し、素材を吟味し、お客様も妥協なく家づくりに関わっただろうと言うことが、
何も言われなくても建物全体の空気から伝わってきます。



家を作る時は、つい個人の趣味とか表面上のデザインに気が取られがちです。
ご夫婦やご両親との間で、普段は気付かなかった趣向を元に意見が対立することもしばしばあります。

でも、本当に大切な事は時間が経ってからこそわかると思います。
個人の趣味を越えて、誰もが「いいなぁ、ここに暮らしたらどんな感じだろう?!」と想像したくなる部分がこの家にはあると思う。

無垢の木の温かみや設計による光の取り入れ方や、天井の高さ、様々な要素がありますが、何か1つがどうと言うより全体のハーモニーみたいなもの。

この空間にいるだけで何かしら豊かな気分になってくる。
例えばここでアコースティックの演奏会をやったらどんなふうに響くだろうとか、夕方にパーティーをやったら夕日が差し込んできれいだろうなぁとか。

様々なシーンを思い浮かべてしまいます。

そういうことを感じ取れる家が普遍的な資産価値の高い家なんだと思います。


「長く使ってからこそ良いと思えるものを」
というのは私が目指している家の姿ですが、このような何十年も住んだ家に来る機会をいただくと、本当にそれを実際の建物で実感することができます。

私はこのようなお仕事を通じ、何十年経っても”やっぱりこれはいいな!”と思ったことを今手掛けている家に盛り込むこともできます。
迷ったときに自信を持って良いものをお勧めすることができます。

考えてみれば、それはとても貴重な立場だと今更ながら思います。

そこそこ歳も取りましたが(笑)このような私にこそ伝えられて、実現できることがあるはず。

ひとつの心得としては「替えられない部分にこそ普遍的に良いと思える設計を盛り込むべき」ということ。

反して設備関係は、 移り変わりが激しく技術の進歩もあってより省エネの商品が出たり、古いものは部品がなくなったりして交換を余儀なくする場合が多いです。
だから、設備はある程度の期間を経て交換していくものだと割り切ったほうがいいかもしれません。


左が新しい障子。右が古いほうの障子。飾りの格子はアンダーセンの場合はしっかりした樹脂製なので、劣化している事はほとんどなくそのまま利用できます。

さて、感激してばっかりでなく、今回の仕事の事も少し具体的に書きます。

網戸交換の後は、ダブルハング=上げ下げ窓のガラスが割れている部分の交換をします。

輸入窓の場合は、ガラスのみを交換ではなく、障子ごと取り寄せて入れ替えということがほとんどです。
発注から3ヶ月から長い時は5ヶ月ぐらい待っていただくことになりますが、取り寄せた後は色を塗って現場に持ち込み数時間で終了します。

こちらのお家は築23年ほどになりますが、窓の品番や年式等の情報がわかれば、海外に発注し同じものを取り寄せることができます。
これを意外と知られてないことが多いので、再度書かせてもらいます。

メリットとして、躯体を触らずに交換ができますので現場での作業が少ないですし、外見も全く変わりません。
時々、「そのことを知らない工務店さんに相談したら、枠のみを残しカバー工法で日本のアルミサッシを入れましょう」と言う提案をされました、とお客様から聞きます。

この場合外見もかなり変わりますので、私はあまりお勧めしません。


障子を取り替えた後にシリコンスプレーをレールに吹きかけて、何度か障子を動かすとかなり動きが軽くなります。
外の窓に関しても重い場合はそのようにして軽くすることができます。

「価値の高い家とは何か?」

私は、流行り廃りに関係なく、時間をかけて醸し出された味わいのある家こそが価値の高い家だと思います。

その空間に身を置いた時に、和洋年齢性別を問わず、誰もが「いい」って感じられる。
どの時代にも流行はあり、家を建てる時にそれが盛り込まれるのも当然あり。

でも流行りが過ぎ去った後でも、それに関係無く人を豊かにさせる普遍的なものが残っている家。
これからもずっと愛おしい家であること。
そんなチャーミングな家がもっと増えていって欲しい。

私が今作っている家も、何十年後か訪れたときにチャーミングな家であるように。

本当の価値のある家を作っていこうと思う。

自分の納得のいく家を。

人が住んだ家を自分の目で見て感じ、ぐっと心にきた印象や、
憧れや夢を運ぶ家こそが間違いなく自分が作るべき家の姿。

そんな事を考えながらお家を後にしました。

これから、この日は、さらに西に車を走らせ、御浜七里ガ浜に向かいます。



RSS 2.0 Login